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第2章 ピンホール(針孔)を作ろう

 

【1.ピンホール(針孔)の製作】
 

用意するもの

1.薄手のアルミ板(0.1mm厚位)缶ビールの側面でも可。この場合は、両面をサンドペーパーをかけて、塗料を落とします。
  大きさは3cmないし4cm四方程度。
(なるべく薄い方が良いですが、アルミホイルは賛成できません。弱すぎて、綺麗な円を開けることが難しいからです。)
2.細めの縫い針。(例:きぬくけ針)
3.消しゴム付きの鉛筆。(ドリルの柄にする)
4.サンドペーパー 細かいもの
5.ニッパーとラジオペンチ
6.はさみ
7.ルーペと定規



作り方

1.縫い針の糸通しあなのある、お尻を5mmから1cm位、ニッパーでカットします。(糸通しあなを取る)
  注:ドリルに使う針の先端部は、ペンチでしっかり挟む。
    針は飛ぶと危ないので空き缶の中などで慎重に切ってください。
2.カットした針先の付いている方の元の部分を鉛筆の消しゴムの中心にしっかりと刺します。
  (針ドリル)→写真01
3.アルミ板を台紙(重ねた新聞紙でもよい)に置いて、中心に、ゆっくり慎重に針の先端を突き刺し、鉛筆自体を回しながら、徐々に刺していきます。
(余り力は入れず徐々に)→写真02、図01
    針はアルミ板に垂直に。回しながら少しずつ。力はいりません。注意:力を掛けすぎて針が折れると危険! (02.08.16追加)
4.全体を持ち上げ、ドリルしながら、アルミ板の反対側から、針の先端が少し出たところで止めます(0.3mm径なら約1mm出る程度)。 →写真03
  注:全部通してしまうと0.4mm以上になり、孔が大きすぎるため。
5.針を回しながら抜き、目の細かいサンドペーパーで、孔の両面を優しくこすり、バリをとります。
6.再度針を入れて、ゆっくり回して孔を完成させます。
7.空いたピンホールの下にスケールを置いて、ルーペで覗き、だいたいの直径の確認と正円に近いか、バリがないか、確認します。バリがあれば、5,6を繰り返します。 →写真04
(実際は、サンドペーパーをかけると針孔の中にバリが出るので、同じ針孔に反対側からそっと針を入れます。針を微妙に回しながら、あくまでも、孔がきれいな円になるまで繰り返します。02.08.16追加)
注:この方法ではだいたいの直径しか分かりませんが、正確な数値よりは、孔の綺麗さ、バリの有無の方が直接画質に影響します。多少の直径の誤差は露出の時間増減でカバーできます。
8.いくつか作ってみましょう。だんだん慣れてきれいな針孔ができるようになります。

 

参考:ピンホール最適径の計算
概算最適ピンホール直径(mm)= 0.037 × √(焦点距離(mm)) 注:焦点距離の平方根

例 焦点距離    直径
  120mm → 0.40mm
   80mm → 0.33mm
   50mm → 0.26mm
   30mm → 0.20mm

自作ピンホールの場合は、ここまで正確な孔は作れません。だいたいで良いでしょう。

 

参考:f値の計算(追加 02/07/08)
上で作ったピンホールを箱や缶のピンホールカメラ本体にセットしますが、撮影時露出時間を決める重要な要素である、絞り値(f値)は以下の簡単な計算式で出します。

f = (ピンホールと感光材の距離)(mm) ÷ ピンホール直径(mm)

例: ピンホールと感光材(印画紙やフィルム)の距離が80mmでピンホール直径が0.3mmの場合
   f = 80 ÷ 0.3 = 267 
→ 近似値 f=256 これは 単体露出計のf=90で測定したシャッター速度(露出時間)の8倍の露出時間になります。(第5章参照)  

 

 

注1 :アルミで作ったピンホールは孔が露出したアルミのため、経時変化に弱い。腐食して孔が大きくなったりする。そうすると、同じ条件で撮影しても、露出オーバーになって、感光材(フィルムや印画紙)が真っ黒になったり、像が結ばなかったりする。アルミで作る場合は、定期的に新しいピンホールと交換したい。変化の少ない素材が希望の場合は、薄いステンレスや、真鍮を使う方法があるが、アルミより硬いため、針ではうまくいかない。マイクロドリルなどの大掛かりな道具が必要になってくる。始めのうちは、アルミでなんども作って見るほうが、経済的で勉強にもなる。

ピンホールの作り方で、針をハンマーでたたいて孔を開ける方法もあるが、実際に作業してみると、上で説明した、消しゴム付き鉛筆を、補助のドリル柄にするやり方のほうが、はるかにやりやすい。 微妙な力の入れ具合も、安全面も、こちらのやり方が優れている。 また、素材として、アルミホイルは勧められない。ホイルは弱すぎて、孔が円にならず、いびつになりがちなことと、バリの処理が難しいため。

もうひとつの簡単な方法 : 薄く光を通さない、黒い紙を使う。 縫い針(カットは不要)を、木製の洗濯バサミか、ラジオペンチでしっかり挟み、先端を、ライターの火で、十分に熱する。 その後、直角に、紙にあてると、そこだけ紙が焼け、小さい穴が開く。 この方法でも、簡便的にピンホールが作れる。 ただし、火を使うので十分注意すること。また、火傷に注意すること。

高画質なピンホールが欲しいときは : 強度があり、非常に薄い素材が必要。 注1の通り、薄いステンレスが良いが、縫い針では正円を開けるのが難しく、微細加工のマイクロドリルで開ける。これは、素人の自作は難易度が高い。 その他の素材では、真鍮や金がある。
孔もレーザーで正確に開けたものがあるが、非常に高価。 薄いステンレスプレートにマイクロドリルで開けたピンホールは、アメリカのメーカーが販売していて、比較的安い。 これは私も使っている。

 

注2 : このページで案内した作り方で実行される場合、安全には、自己責任において、十分注意して実施してください。 不注意で、怪我や、事故をされた場合、著者は、一切、いかなる責任も負いません。

     

公開2002.5.7 更新2010.7.7

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写真.01

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図.01
写真.02

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写真.03
写真.04

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