Essay
Sunset Bay (日没前)
    1998年秋、レビンソン氏がシティースケープの一連の作品で使った、ブローニー判6×7の自作ピンホールカメラを見せてもらい、私もピンホールカメラを自作してみようか、という気持ちが初めて芽生えていた。ただあくまでも作品はレンズカメラで制作を続け、ピンホールは余興程度のつもりだった。
  ちょうど同時期に銀座のデパートで中古カメラ市があった。レンズカメラ中心だった私は、例年通り冷やかし半分で見に行った。
  そこで偶然出会ってしまったのが、ホースマンの6×9用フィルムホルダーとアメリカ製のステンレス箔のピンホールセットだった。これを使えばレビンソンさんと同じような中判ピンホールカメラが作れるのではないか、とひらめいた。

 両者を安く手に入れて帰った後、そのフィルムホルダーに合わせて、木製の箱の図面を作って、友人の大工さんに手伝ってもらって本体を製作した。
  ピンホールからフィルム面までの距離は83mm。f値は256。内面にフィルターもセットできるようにした。

 ある日の夕方、家内と港方面を散歩した折、初めてこのカメラをテスト撮影した。テストは1本だけ。だが、結果は散々だった。というのも1本分8カットの大半が光漏れで使い物にならなかったからだ。目に見えない小さい隙間が箱やホルダーとの接合部にあって、ピンホール写真ではそれがモロに効いてしまう事を教えられた。 

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Sunset Bay (page link)

 しかし、1枚、偶然きちんと撮れていた写真がこの"Sunset Bay"だ。ヨットが並ぶ向こうに夕陽が沈んでいく。

 このカットを現像してチェックした瞬間、衝撃に打たれた。なんという光の柔らかな描写だろう。レンズでは絶対に出せない描写。輪郭のはっきりしないボートやヨットの帆柱も風情がある。


このカットこそが、その後私をピンホール写真に引きずり込んだ、きっかけの一枚である。その意味で記念すべき写真である。

2009年2月

©2009 Toshihiro Hayashi

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