昨年の8月、もう夏休みも残り少なくなった24日の土曜日に、ピンホールカメラのワークショップを行った。対象は、船橋市在住ので親子20組。船橋市には23の公民館があり、4つの地域ブロックに分かれている。今回のワークショップの主催は、その東部ブロック5館(東部、習志野台、薬円台、三田、飯山満)で、主管は東部公民館だった。
毎年夏休みには親子の為の企画を続けているそうで、防災体験とか、昨年は木工を取り組んだそうだ。しかし、2日間(土曜日2回)のコースにすると、付き添う親御さんの時間が取れないという不評があり、今回は1日コースという前提だった。
場所は、大神宮近くの女性センターを使った。ここには市が管理している暗室がある。多少狭いが子供なら5人位一度に入れる。通常の部屋を遮光して暗室にするのは大変な作業だし、水回りの問題や、器具の搬入などが重荷になるが、船橋は暗室があるので助かる。
ピンホールのワークショップは本来は2日間欲しい。それを1日、しかもエンドは5時より遅くなれない。さらに受講するのは3年生以上の小学生だ。そのため、心臓部のピンホール自体は本人に製作させるが、外側の箱の組み立てと、中の黒塗りは事前に公民館で作業してもらうことになった。公民館の方達が水性の艶消し黒ペンキを使って、とても綺麗に人数分の箱を作ってくれた。
準備は万端だったが、唯一気になったのは天気。予報では曇り時々雨だった。だが、晴れ男の私の効果があってか、朝は曇っていたが、どんどんと天気は良くなり、昼前後からは晴れ上がった。
経験的に、このワークショップでどこに感動して、何に夢中になるかは知っている。それは、自分で撮ったピンホール写真が暗室で現像されて像が出てくる瞬間だ。それまでは針で穴を開けただけの仕掛けで、写真が写るのかどうか、半信半疑だった子供達も予想以上にシャープなネガが現像されると大歓声を上げる。
だから、1日かけてカメラを作ってハイ終りでは、このワークショップの魅力は出ない。短い時間でも何回も何枚も自分で作ったカメラで撮って現像する喜びを体験することが大切である。
今回もまさにそうだった。昼休み前に1枚は撮らせたいと、11時までに製作を終えた。基本的な失敗が無いように、子供達が開けたアルミ板上の針穴は、ライトボックスとルーペで全部チェックしてあげた。この段階では、まだ子供達の表情は学校の授業のようだった。その間、アシスタントをしてくれたH君が、暗室で準備を進めた。
撮影は何度も繰り返す事が大切なので、近場で撮影してすぐに暗室に戻れるよう考えた。当初、漁港の方へ撮影に行ったらどうかとの意見もあったが、子供の足では片道15分から20分かかり、何度も撮影させる為には、残念だったがこのアイデアは放棄した。
11時、全員に暗室でキャビネサイズの印画紙を自分のピンホールカメラにセットさせて、まず、海老川の橋のたもとで、撮影の説明をして、生まれて初めてのピンホール写真撮影を開始した。
5人ずつ暗室へ入れて現像させる。ワーという歓声が外に聞こえる。像が出たのだ。それを聞いて、待っている子供達も期待にワクワクしだした。午前中に1回は撮影させる、という作戦は成功だった。夢中になって昼食をとる時間も惜しむ子供達が続出。パンをかじりながら暗室の順番待ちの列に並んでいた。
撮影場所は海老川から大神宮の間に限定した。事故のないよう、保護者には撮影に同伴してもらった。撮っては暗室に駈け戻り、現像し、新しい印画紙をセットして飛び出していく。保護者の方々がくたびれたようだ。撮影個所は狭い範囲だったが、子供達は自由な発想で、ショーウィンドウを撮ったり、マンションを撮ったり、自分を撮ったり、大神宮で被写体を見つけたりして、撮るものには不自由しなかった。
「3時に撮影は終了してポジの制作に入るよ」と言うと、「ヤダー!もっと撮りたい!」との声。だが、作品1枚はポジも作って公民館に展示することになっているし、5時エンドでは、3時からポジ作り開始でギリギリの時間なので、なんとか納得させる。
ポジは、各人に選ばせたベストのネガを、H君がベタ焼きの要領で引伸ばし機の露光で反転させ、現像は本人に任せる。これも全員が完了できた。
終ってしまうのが惜しそうな子が何人もいた。どの時代も子供は好奇心のかたまりだし、この一日の感動が将来、彼らに糧になることを願った。 (2003.1)