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第5章 撮影してみよう(2)

【3.露光時間を決める】

3-1. カメラのf値を知っておく
使うピンホールカメラのf値(絞り値)を知っておきましょう。(第2章参照)
ピンホールと印画紙の距離(この場合は箱の奥行き)をピンホールの直径で割ります。
例: 箱の奥行きが80mmでピンホール直径が約0.3mmの場合は、
f=80÷0.3 = 約f=256 (近似値)

3-2. 単体露出計を持っている場合
感度をISO=6(通常のRC印画紙)にセットします。測光し、f=90の時のシャッター速度を見ます。(通常はシャッター速度を決めて絞り値を見ますが、この場合は逆です)
上記の例ではf=256のカメラなので、f=90で測光したシャッター速度の8倍が必要な露出時間です。 例えば露出計では、f90で10秒と出たら、80秒(約1分20秒)が適正露出時間です。
(多諧調RC印画紙で、フィルターなしで使う場合は、ISOを12にセットします)

3-3. マニュアルの一眼レフカメラで測光する場合
あくまでも、ISO感度もシャッターも絞りも手動設定できるマニュアル一眼レフで、かつ測光機能があるカメラの場合です。厄介なのはISOが6に設定できるカメラは余りないことです。その場合は最低値にしておいて、また倍数おを計算する必要があります。
通常のレンズではf90はありません。広角28mmから50mmレンズを使った場合、f16の絞りでのシャッター速度を被写体に向けて測光して出します。後は倍数の問題です。カメラのISO設定を12の場合は、512倍の露光時間になります。(約500倍でよい)

3-4. 何もない場合
全く勘です。印画紙の場合、後の現像処理はフィルムより楽ですが、露出決定は結構むずかしく、上記の露光で決めた露出時間で完璧という具合にはなかなかいきません。だから勘でも結構、機械に対抗できます。

快晴の日中で日なたの場合  30秒から2分でまず試す (f256前後の場合は、1分でまず試す)
明るい曇りの場合       2分から3分で
曇り及び日陰(かなり日陰) 3分から5分で
昼間の室内         10分から20分で
暗い室内(雨の日や蛍光灯下)初めの場合はやめておきましょう

とりあえず、全部に共通することはテスト撮りしてみて現像し、ネガが薄かったら露出を延ばして再トライ、黒かったら、露出を短くして再トライ、どうやっても真っ黒だったら、カメラ自体の光漏れを疑いましょう。
また、どうやっても白い、ネガが薄い、という場合は、印画紙の表裏を逆にセットしていないか、疑ってみましょう。

f値
f90を1とした露出倍数
f16を1とした露出倍数
5.6
8
11
16
1
22
2
32
4
45
8
64
 
16
90
1
32
128
2
64
180
4
128
256
8
256
360
16
512
512
32
1024

【4.撮影】

やっと構図と露出時間が決まりました。撮影自体は簡単です。カメラが揺れないよう注意しながら、ピンホールを覆っていた黒テープをはがします。(露出開始) テープはあとでまた貼るので粘着面がだめにならないよう、丸めたりしないでください。
腕時計、ストップウォッチ、心の中で数を数える、など、どれでもいいですから、決めた時間までそっと見守りましょう。時間がきたら、そっとテープを元通り、ピンホールを完全に覆うように張ります。(露出終了)

そして、一目散に暗室に帰り、印画紙を取り出して現像しましょう。現像の詳細や、ポジ画像の作り方は、本章では記載しません。(別章で載せるつもりです)

【5.印画紙で注意すること】

印画紙はもともとフィルムの代りに作られたわけではなく、暗室で引伸ばし機や密着により、ネガフィルムからプリントを作る目的で設計されています。光に感じる特性(波長による感度特性)はフィルムと異なります。
やってみると分かりますが、青い色を強く感じます。つまり、晴天の場合、青空を沢山入れると露出時間が適正でも真っ黒になってしまいます。反面、赤い色の感度は鈍くなります。
また、露出オーバーはなるべく避けましょう。真っ黒になってしまいます。

作ったカメラは何度もテストして、適性な露出を実験的に得ておくことが重要です。カメラの光漏れがないか、のテストも必要です。作ってすぐに成功するとは思わないこと。(失敗を楽しむ余裕を持ちましょう) 
身近なもの、明るいところ、日陰、なんども撮っては、暗室で現像してみて、そのカメラの露出を体得しておくことです。それから初めて、作品にしたい被写体を撮りに行きましょう。


 

公開:2002.7.8 更新:2010.7.7 

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