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第6章 印画紙の現像とポジの作り方(1)

【6.現像とポジ画像の作り方】

【初めに】
撮影が終ったら、いよいよネガ印画紙の現像です。この章では、印画紙を感光体(ネガ)にした場合の、印画紙の現像と、その後のポジ画像の作り方を述べます。なお、この章もページを分割してあります。

【1.用具の準備】

1)バット 最低4枚:
現像したい印画紙が、余裕をもって、入るサイズ。写真用のバットは底に凹凸があって、印画紙が底面にくっつくのを防げます。しかし、100円ショップのトレーでも代用は可能です。 バットは、現像液用と停止液用、定着液用、水洗用と分けておいた方が良いでしょう。混用すると、残留液が混じって、トラブルことがあるからです。(停止用と定着用はともに酸性のため兼用可能)

2)ピンセット 最低3本:
これは写真用品店で買いましょう。柄は、竹製、プラスティック製、とステンレス製があります。どれも先端部は、印画紙を傷つけないよう、ゴムがついています。バットと同様、ピンセットも、現像、停止、定着とそれぞれ専用のピンセットを使います。面倒だからと、現像用のピンセットで停止液につけては、いけません。そのため、ゴムや柄が色分けされていますので、どの色のピンセットをどの液用にするか、決めてください。

3)ビーカー 最低2つ:
キャビネ判の印画紙だけ現像する場合は、現像液は1リットルから2リットルもあれば十分です。2つ必要なわけは、現像液等、アルカリ性の液を希釈するもの、定着液等、酸性の液を希釈するものは分けねばならないからです。ビーカーも写真用ではなくとも代用ができますが、液量がわかるものが良いでしょう。(液量を測れるメスシリンダーやビーカーがあれば尚良い)

4)セーフライト・暗室用電球:
セーフライトは写真用品店で比較的安く売っています。使う印画紙が、多階調印画紙(フィルターで号数を変えられるもの)を使う場合は、多階調用のセーフライトガラスを使うこと。簡単な電球タイプの暗室用電球もあります。(例:親子球)これもいろいろ種類がありますが、多階調用には向かないものもありますので、調べて買ってください。代用策=赤いセロハンで電球を完全に覆ってしまう。暗いけれど懐中電灯を赤いセロハンで覆ってもできます。

5)密着ポジ製作用の電球:
引伸ばし機は普通持っていないので、普通の電球で代用します。

6)暗室:
専用の暗室が無い場合は、外光が入らない部屋や押入れ、風呂場を利用します。窓の遮光には、暗室用カーテンが有効です。光漏れのチェックは、全部電気を消して、しばらく目が慣れても光が入っていなければOKです。

7)水切り用ブレード(水滴防止剤を使い、吊り下げて干す場合は無くても良い)

8)印画紙を干すもの。清潔な網など。
なければ、新聞紙に広げてもできます。または、角型ピンチ付きハンガー等印画紙を吊るして干すもの。洗濯用で十分です。

 

【2.薬品の準備】

1)現像液:
現像液はいろいろな種類があります。粉末状で事前に濃縮液を作り、使用時に希釈するもの(例:コダックのデクトール)、濃縮液で売っていて使用時に希釈するもの(例:イルフォード現像液) 今回は、デクトールで説明します。デクトールは、事前に説明にあるとおり、温水で溶解して濃縮液を作ります(できれば一晩以上おく)。使用時に濃縮液を1:3に希釈します。 液温は18度から20度がベターです。夏場液温がどうしても上がってしまう環境の場合は、24度タイプの液式濃縮現像液(オリエンタル等)を利用する手もあります。

2)停止液:
停止液は写真用の酢酸(90%)を水1リットルに対して、15ミリリットル入れて作ります。液温は、現像液と同様、20度がベター。

3)定着液:
定着液も、いろいろ種類があります。コダックのフィクサー等標準定着液は、定着に5〜10分かかります。迅速定着液を使えば1〜2分で定着します。ここではイルフォードの濃縮液タイプの迅速定着液(ハイパムフィクサー)を使います。これは、使用時に1:5で水で希釈して使用します。コダックや富士の標準定着液は、粉末で売っています。事前に25度以下の、説明書どおりの量の水で溶いておきます。

4)あれば良いその他の薬品:
水洗促進剤 (富士QW等)、 水滴防止剤(富士ドライウェル等)

5)現像液、停止液、定着液をそれぞれのバットに入れて、それぞれ、専用のピンセットを用意します。もうひとつ、水を入れたバットを最後に置いておきます。定着後の印画紙を移して水洗するバットです。

*当日、希釈して使用した現像液と停止液は、能力が残っていても廃棄します。定着液は能力が残っていれば、保存容器に戻して、次の時再度つかえます。(定着液の能力はハイポメーター(比重計)や、フィルムの切れ端を定着テストに使う方法でチェックします)

【3.ネガ印画紙の現像】

1)暗室内の安全光のもとで、撮影済みのピンホールカメラの箱を開けて、テープで付けておいた印画紙をそっとはがします。このとき、印画紙が折れないように。また、裏にテープが付いてくることがあるので、そのときは外して箱の底にテープは戻します。(慣れるとテープを指で押さえながら、うまく印画紙がはずせるようになります)

2)そっと印画紙を現像液に浸します。(一枚ずつ現像。2枚重ねて入れないように)
ムラにならないよう速やかにピンセットで押さえ、現像液が十分に表面を覆うようにします。印画紙は表向きに入れても、安全光が離れていればOK。RC印画紙の場合、30秒以内に像がかなり出てきます。ピンセットでときどき印画紙を液中で揺らせながら90秒以上現像します。(現像液によっては60秒以上) このとき、すぐに真っ黒になってしまうネガは、露出が多すぎたネガ、いつまでも像が出ないようなネガは露出が少ないネガですが、真っ黒になる場合は、カメラの光漏れも考えられます。うまく行ったネガは安全光下でも画像が確認できます。 (沢山の印画紙を現像する場合、現像液の疲労も要注意です。現像液の場合、像の現れるのが遅くなる、黒のしまりが無いなどは、もう赤信号です。新しい現像液に換えてください。このとき、停止液もセットで交換しましょう)

3)90秒経ったら、ピンセットで印画紙を現像液から出し、水滴が切れるのを少し待ち、隣の停止液に入れます。このとき、現像液のピンセットは絶対に停止液には漬けないこと。

4)停止液は30秒。同じように印画紙は液中で攪拌、その後水滴を切って定着液に。

5)定着液は迅速タイプの場合は1分、標準定着液の場合は5分以上定着します。迅速の場合30秒、標準の場合1分以上経てば、暗室の電気を点灯してもかまいません。画像をチェックしましょう。 また、定着液も疲労してくると能力が落ちます。なるべくゆとりのある量を用意しましょう。

6)ネガが濃すぎないか、薄すぎないか、チェックしましょう。濃すぎる場合は次の撮影で、露光時間を短く、薄い場合は反対に多めに露光して再トライしましょう。なお、ネガの白い部分(被写体は暗い部分)が、グレーに被っている場合は、安全光が完全でなく、光かぶりしている場合も考えられます。

7)定着が終ったら、水の入ったバットに移動させます。(後から、まとめて水洗します)

8)次の印画紙をカメラにセットして撮影に行きましょう。

9)水洗:水洗は、印画紙に残っている定着液の成分を洗い流す処理です。残っていると、後から印画紙が黄ばんだりして保存性が悪くなります。 バットに流水を流して、溜まった印画紙を入れ、一番下の印画紙を一番上に持ってくるという、循環を繰り返します。印画紙を折らないように、できれば手でやってください。ピンセットを使う場合は折れや傷をつけないように。RP印画紙の場合、適度な流水量(1分から1分半でバット内の水が入れ替わるくらい)では、10分程度の水洗で十分です。水洗促進剤(QW)などを一次水洗の後に、使えば、更に水洗が完全になります。

10)水洗が終ったら、一枚ずつ水滴防止剤を入れた液に浸してから、ブレード等でスクイーズ(ぬぐうこと)をして干します。干す道具は、洗濯用の角型ハンガーでOKですが、ピンホールのネガ印画紙は、隅まで画像が写っていて、ピンチの跡をつけたくありませんから、新聞紙の上などに水平に、重ならないように置いて乾かしても結構です。(もしあれば、清潔な網の上)

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公開:2002.8.12 

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